と言われると、むっ、と思う。どれほど普段信頼している相手であっても、ここから先は少し用心して聞かなければいけないぞ、という構えになる。
「彼女はすぐ感情的になって、困るんだよね。そうなるともうこっちの言うことも聞いてくれないし、会話が成立しなくなっちゃう」
とこぼしたのは男友だちだ。恋人とのコミュニケーションがうまくいかないという。肩をすくめるようなその調子からは、単なるその場のコミュニケーションのすれ違い以上に、恋人の態度にほとほと困らされている彼の日常的なありようが見て取れる。その、「だけ」というのに、わたしは興味を惹かれる。「自分は、そこまで過大な要求をしたり、彼女にひどいことをしているわけではないよね?」と確認するような、「だけ」。
★これまでホームページで連載していたエッセイを、「百万年書房LIVE!」さんで連載させていただけることになりました!
http://live.millionyearsbookstore.com
それに伴い、このエッセイもお引っ越しします。
来年百万年書房さんよりエッセイ集を刊行予定です! お楽しみに!