不足(台所で書いた詩) | ことぱ舎
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詩と読みものReadings

不足(台所で書いた詩)

ヤムウンセン
という
タイのサラダを食べようと思って
ほとんど作りおえたところ
ピーナツがないのに気づく
家じゅうをウロウロした挙句に
もっともピーナツらしかったのは
朝食用のグラノラに含まれている
くるみだった
アルミ袋に手をつっこみ
指で押し麦とドライフルーツとを識別して
くるみだけを一粒ずつ摘出
不完全なヤムウンセンに
一粒ずつ乗せて
完全な
ヤムウンセンになりますように
なりますように
脳のひだひだに換気扇がしみてくる
これは
なにのシーンだろう
愚かさか
あるいはいかにも生活者らしい聡さか
まずしさだろうか
不足への抵抗か
むしろ 服従なのか

タイはまだ夕方
わたしと同じ年の
タイの女の子が
くるみを摘まみ出す手つきをみたら
笑うだろうか 気を害すか
べつにどうでもいいと思うのか

完全な まいにちに
なりますように
なりますように
タイフードらしからぬ
かといって郷愁も呼ばない
メープル臭たちのぼる